上層気象(高層気象)
【上層気象観測とは】
- 上層気象観測は、上空の気象状況、逆転層の形成と崩壊のプロセスなどを観測し、主に清掃工場や発電施設建設の環境アセスメント(環境影響評価)の一環として行われます。
- 上層気象観測は観測地点上空(2,000m位まで)の風向・風速及び気温・湿度の鉛直分布について観測します。
【上層気象観測の動向】
気象観測が始められた当初は、地上気象観測が主な対象として観測されていました。しかし、気象現象を知る上では、上層気象も観測する必要があることが言われるようになり、山岳での観測が始まりました。ところが、山岳では、場所と高さに制限があります。そこで、飛行機を使用した観測や、自動で記録のできる観測器を用いてデータをとる方法が考案されました。
当初は、小型軽量の観測器を気球に取り付けて飛揚し、落下したものを回収してデータをとる方式でした。しかし、回収できない場合が多く、データを得るのに時間がかかっていました。そこで、そういう欠点をもたない方法としてラジオゾンデが考えられました。
昭和7年頃に、研究が開始され、昭和13年には、ルーチン観測が実施されています。このとき使用されたラジオゾンデは、(搬送波)周波数変化方式で、項目としては温度と気圧の測定でした。
現在では、GPSを利用したGPSゾンデが開発されています。GPSゾンデは、GPS衛星から発信される信号をゾンデに搭載されているGPS信号受信装置で取得し、気象観測装置で得た温度・湿度等の各気象データとともに位置情報を地上へ伝送します。GPSゾンデからの電波を地上設備で受信します。
ただ、気球を上空へ飛揚させるため、航空機等の航行に影響を及ぼす懸念もあります。そこで、行政は、航空法の第99条第2項において、航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為は、国土交通大臣に通報しなければならないと定めています。
第99条:「何人も、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域又は航空交通管制区内の特別管制空域における航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのあるロケットの打ち上げその他の行為(物件の設置及び積載を除く。)で国土交通省令で定めるものをしてはならない。ただし、国土交通省が、当該行為について、航空機の飛行に影響を及ぼす恐れがないものであると認め、又は公益上必要やむを得ず、かつ、一時的なものであると認めて許可をした場合は、この限りでない。」
第99条2:「前項の空域以外の空域における航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為(物件の設置及び積載を除く。)で国土交通省令で定めるものをしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に通報しなければならない。」
このように、航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのあるゾンデの打ち上げには十分な注意が必要です。
【ムラタの取り組み】
- D-GPS(Differential-Global Positioning System)を使用した高精度の観測
ムラタでは、D-GPSを使用した測定方法を採用し、高精度な上層気象観測を実施しております。
【用語解説】
- 環境アセスメント(環境影響評価)
- ラジオゾンデ
ラジオゾンデとは、大気を測定するセンサと測定値を地上に送信する発信器から構成されています。ゴム気球に吊して飛ばすことで、上空の風向、風速、温度、湿度、気圧などを測定します。電波の受信は、地上で行いそのデータから風向、風速、温度、湿度、気圧などを観測します。 - GPSゾンデ
D-GPS(Differential-Global Positioning System)を使用した高層気象観測用のラジオゾンデ観測システムのことです。
GPSゾンデは、ゾンデに搭載されているGPS受信機の位置データと温度及び湿度の各気象データを時分割多重PCM方式で、404.5MHzの搬送波にのせて地上観測地点へ伝送します。
地上観測地点ではGPSゾンデからの観測データとGPS衛星の信号を受信、演算し高度別の風向、風速、温度、湿度、気圧データを高精度で観測可能となっております。 - 逆転層(放射逆転)
通常、大気中温度は約0.6℃/100mの割合で上空へ行くほど低下しますが、大気中で逆にある高度から温度が上昇する事があります。この温度の高くなっている空気の層を逆転層といいます。
風の弱い夜間、早朝に放射冷却現象によって地表付近の空気が冷やされ、上空に逆転層が生じる現象を放射逆転といいます。逆転層が発生した大気中では上下方向の対流が起きにくくなり、大気汚染物質が地表付近に滞留しやすくなります。
【関係法令等】
- 航空法(e-Gov法令データ提供システム)